時事問題著者:茶山警備業

-EP.30- 夏季オリンピック・パリ大会の背景について

1.はじめに

 標記大会は、7月26日午後7時半(日本時間27日午前2時半)、セーヌ川を舞台にして開会式が挙行され、8月11日まで17日間の日程による競技が開始されました。
 オリンピック大会は、4年に一度の平和の祭典として開催され、世界各国から多数のアスリート、要人、観客等が集まり、国際交流や政治・外交の場ともなることから、国際的にも大変、関心の高い行事であります。反面、この大会を妨害し、自己の政治目的を遂げようとするテロの標的になりやすい側面もあります。
 今回は、このパリ大会と前回の東京オリンピックとの特徴について比較してみました。

2.東京大会とパリ大会の特徴について

(1)東京大会の特徴 
 東京大会は、新型コロナウイルスの世界的蔓延に翻弄された大会でありました。大会運営は1年延期され、一部では開催返上の声もありました。そのような中で、競技会場に応援者などを入場させない措置がとられ、無観客開催となっています。
 競技期間の前後を含めて、大会運営を阻害する大きな事件事故の発生もなく、日本の治安の良さを世界に発信することができました。特に、民間警備員の活動が、外国メディアによってとりあげられ、国際的にも大きく評価された大会となりました。

(2)パリ大会の特徴など
 パリ大会では、開催日の前日25日夜から26日朝にかけて、フランス国鉄の高速列車TGV3路線(パリから北部リール、南西部ボルドー、東部ストライスブールを結ぶ路線)で、複数の放火や電気設備などに対する大規模な攻撃があり、列車の正常な運行が大きく阻害される事案が発生しました。この事案で、人的被害はなかったものの列車利用の観光客や関係者等に、改めてテロへの脅威と不安感を与えています。
 当局は、パリオリンピックへの妨害を意図した組織犯罪とみて捜査を開始し、パリ警視庁は、市内主要駅の警備を一層強化すると伝えています。また、大会組織委員会では、警察や憲兵隊約4万5千人を配置して厳戒体制で警戒に当たっているとして、安全確保に向けた対策を発表しています。
   
東京大会時には見られなかったその他の特徴は次の通りです。    
 ア.分断社会のなかでの開催であること 
 令和4年2月ロシアがウクライナへ侵攻し、以降、世界では両国をめぐり自由主義国家と専制主義国家に分かれて各々の立場で支援しており、戦争状態の終息が見通せない現状があります。このほか、イスラエルによるパレスチナ自治区のガザへの攻撃など、世界で分断の構図が常態化しているなかでの開催となりました。IOC(国際オリンピック委員会)は、「ロシア」及びロシアの同盟国である「ベラルーシ」に対し、本大会への参加を禁止する措置をとりました。
 ただ、当該両国の所属選手には、大会予選などを経て、すでに競技出場枠を得ている選手もあり、このような選手には「中立な立場の選手(AIN)」としての出場を容認しましたが、所属する国の「国旗」と「国歌」の使用は認めないという異例の措置をとっています。

 イ.ジェンダー平等の理念を反映した大会であること
 パリ大会は、オリンピック史上、初めて選手出場枠の男女同数が実現された大会となり、ジェンダー平等の理念が反映された大会と評価されています。
 ただ、ボクシング女子の66Kg2回戦で、男性を示す染色体を持つ選手と対戦した選手が、「相手のあまりにも強い打撃に、生命の危険を感じた。」として試合開始46秒で棄権する事態が発生し、選手の性別をめぐる国際的な議論を巻き起こしています。
 
 ウ.環境問題について課題
 環境問題として、トライアスロン競技の会場となるセーヌ川の水質汚染です。
 水質汚染が原因で、男子の試合日が延期されたり、同川を泳いだ女子選手が大腸菌感染症とみられる症状で入院、あるいは体調不良を訴える選手が続出し、競技から撤退する国もありました。東京大会時には見られなかった事態です。

3.おわりに

 パリオリンピックの日本選手には、石川県出身の選手もいて、各競技とも連日熱い戦いが続いています。メダル獲得の有無にかかわらず、健闘する各選手の活躍に、国民全員が大きな感動と勇気をもらっております。最後まで、選手を力一杯応援したいと思います。

担当:茶山顧問