著者:茶山警備業

-EP.38- 刑法等の一部を改正する法律(以下「改正刑法」)の施行と警備業法の改正について

1.はじめに

 標記改正刑法が今月1日に施行されました。改正の内容は、刑の種類のうち懲役と禁錮が廃止され、これに代わる新たな自由刑として「拘禁刑」が創設されました。この改正により、警備業法においても同第3条2号の要件にかかる「禁錮以上の刑」の部分が「拘禁刑以上の刑」に改正されることとなり、警備員の誓約書等の様式中に使用されていた当該文言も、前記のとおり変更されることになりました。
 今回はこの件について取り上げます。
 

2.「拘禁刑」について

ア.従来の刑法に規定されていた「懲役」と「禁錮」の意味 
 懲役は、罪を犯した者を刑事施設(刑務所等)に収容して、円滑な社会復帰を目指す更正目的をもって、刑務作業を義務付けるという作業中心の措置がとられてきました。
 禁錮は、受刑者の身体を拘束する点では懲役と同じ自由刑ですが、刑務作業に関して、希望した場合のみ同作業に就けるという点で、懲役と区別されて運用されてきました。禁錮は懲役と同じ自由刑ですが、より、受刑者の自由のはく奪に重点を置いて制定されました。
 今回の改正刑法で、懲役と禁錮を拘禁刑に一本化し、刑務作業を義務付けずに運用することになりました。

イ.懲役と禁錮の一本化の背景
 ①再犯者の増加と受刑者の高齢化
  従来の刑事施設内の教育では、更生目的の達成に効果が見通せず、再犯防止に繋がる施策になっていない。また、受刑者の高齢化が進み、体力の低下や認知機能の低下により、刑務作業等に困難を来たす現状がある。
 ②科刑上の問題
  近年の禁錮刑受刑者が、減少傾向にあり、科刑上、懲役と禁錮を区別する必要性に乏しいことや再犯防止が強調されるようになり、受刑者の特性に応じた作業や、指導、教育を柔軟に組み合わせる施策で、再犯防止の実効性を高めたい
  などがあります。

3.おわりに

 法体系のなかで、刑法第8条(他の法令の罪に対する適用)の規定により、行政刑法の範疇にある警備業法も改正の対象となった経緯にありますが、刑法が、明治40年4月に制定以来刑の種類に変更を加えるのは、約120年ぶりのこととなりました。
 なお、刑のうち自由刑である「拘留」は改正していないことに留意願います。
 ※拘留…1日以上30日未満の範囲で拘留場に身柄を拘置する刑のこと。

担当:茶山顧問