-EP.19- 薬物乱用問題について
1.はじめに
今月16日に、俳優の「永山絢斗」(34歳)が、大麻取締法違反(所持)容疑で、警視庁に逮捕され、各方面に波紋を広げています。過去にも芸能界では著名な俳優が、同種の違反に関わり逮捕される事例が発生しています。薬物犯罪は、特別な世界の出来事ではなく、一般社会人にも広がりを見せている現状です。
この稿を作成中も、韓国で大学受験生の覚せい剤使用問題が社会に強い衝撃をあたえていると報じられ、国内では、日本ボクシングコミッションが、前WBO世界スーパーフライ級王者井岡一翔の尿鑑定結果、大麻成分が検出されたと発表しております。
今回は、薬物乱用の危険性等について取り上げ注意喚起したいと思います。
2.薬物について
(1)法律で規制される薬物
人の中枢神経に作用して心に影響を及ぼす薬で、一時的な多幸感や快楽等をもたらすなどの薬理効果や依存性等を持ち、心身に有害な薬として世界保健機関(WHO)は、次の通り分類しています。()内は対応する法律です。
① アヘン型 … モルヒネ、アヘン、ヘロイン等(あへん法、麻薬及び向精神薬取締法)
② アルコール・バルビツール塩酸類 … 睡眠薬、抗不安薬、アルコール類等(麻薬及び向精神薬取締法)
③ アンフェタミン型 … 覚せい剤 (覚せい剤取締法)
④ コカイン型 … 塩酸コカイン、クラック (麻薬及び向精神薬取締法)
⑤ 大麻型 … 大麻草、マリファナ、ハシシュ等 (大麻取締法)
⑥ カート型 … カート (麻薬及び向精神薬取締法)
⑦ 幻覚剤型 … LSD、メスカリン、PCP等 (麻薬及び向精神薬取締法)
⑧ 有機溶剤型 … トルエン、メタノール、アセトン等 (毒物及び劇物取締法)
(2)規制の態様
① 輸入 ② 輸出 ③ 所持 ④ 製造 ⑤ 譲渡 ⑥ 譲受 ⑦ 使用
但し、あへん法では、特定けしの栽培を禁じ、大麻取締法では、大麻草の栽培を禁ずるなど、対応する法律により規制内容が異なっています。
(3)薬物の危険性
薬物の乱用は、人の健康を害し人格破綻に導くだけでなく、時には死に至らしめることもある。また、薬物の密売に絡む収益が、暴力団の資金源となっているほか薬理作用の幻視、幻覚、幻聴に起因する殺人、強盗致傷、放火等の凶悪事件及び薬物購入資金獲得目的の強盗、窃盗、詐欺、売春事犯、事故などの第二次犯罪等を引き起こして、社会に多大な脅威と不安を与えています。
(4)薬物の二面性
上記薬物について、摂取の危険性を取り上げましたが、医療では、モルヒネが癌患者の痛みをやわらげるために使用したり、風邪薬、睡眠薬、抗うつ剤等にも規制物質を調節して用いるなど、保健衛生面での有用性が認められています。
私たちは、薬物の二面性について正しく理解し、上手に利用し、付き合っていくという健康上の心構えが必要になります。
3.終わりに
薬物問題では、1840年に起こったアヘン戦争があります。英国が当時の清(中国)へ、インド産のアヘンを密輸し、同国内に蔓延させたことで戦争となり、結局アヘン中毒の弊害等で清国が破れ、1842年に南京条約により講和したが、内容は、香港島の譲渡や上海、広州等主要5港の開港等で、清国にとって不利益な形で終戦となりました。
この香港が、その後1997年(平成9年)7月に、中国に施政が返還されました。実に150年余も経ってからのことです。
このような背景もあって、世界各国が薬物乱用対策を重視しており、取締法を定めていますが、中国、フイリッピン等では薬物乱用に死刑を定める国もあり、外国旅行をする際には、薬物の取り扱いに十分注意が必要です。
なお、国内で、一部の国や地域では、大麻の吸引を処罰しないところがあると言って、大麻使用を合法化するよう求める声もありますが、大麻の有害性は変わらないので、安易に近づかないようにしましょう。
担当:茶山顧問