人間力季節たより著者:茶山

-EP.16- 桜の花に寄せて

1.はじめに

 4月に入り、各地で、桜の開花や入園、入学、入社式挙行や人事異動のニュース等が報じられ、各々の新しい生活がスタートします。一方、県内では大型企業の事業整理で多数の解雇者が見込まれる等の報道もあり、悲喜こもごもの春を迎えますが、今回は季節を代表する桜の花をテーマにした歌から、人生訓となる事柄を探してみました。

2.「明日ありと思う心の仇桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」

 浄土真宗の開祖「親鸞聖人」が詠んだ歌として知られていますが、この歌の概意は次のように説明されています。
 “桜の花は、明日も咲いていると思っていると、夜中に嵐が来て花を吹き散らすことが無いと言えようか。明日はどうなるかわからない。明日、花見に行こうと思っていても花は散ってしまい見られないかも知れないよ。世の中の諸事は無常ですよ。”と諭した言葉とあります。作中の、「仇桜」(あだざくら)とは、散りやすい桜の花を表し、すぐ形を失くしてしまう「儚い」ものとしてとらえています。
 当社社員の作成標語(昨年度 石川県警備業協会選考優秀作品)
 “明日やる 絶対やらない 今やろう” の気持ちが無ければ、美しい花は鑑賞できないと言うことになります。
 
 今一つ、この歌の背景にある「無常」についてですが、解説書では、「無常とは物事には安定や一定は無く、ずっと今のままではいられないこと。」とありました。
 かつて、訪れた福井県永平寺の境内の一角に、標題が「無常ならざるもの」と記した立て看板を思い出しました。文中の内容は、「生まれたものは死ぬ、会ったものは別れ、持ったものは失い 作ったものはこわれます 時は矢のように去っていきます すべてが無常です等」と記載されていました。
 私たちが日々の生活の中で、当たり前のことと考えている起臥寝食等すべてにわたり、実は当たり前では無い故に、何事に対しても感謝の念を持ち、毎日丁寧に、精一杯生きることが大切であると説いているのです。

3.終わりに

 この歌以外にも、立派な先人が「桜の花」を通して感じた思い等を和歌、名言・随筆等に託した文学作品は多数ありますので、折々に触れてみる機会を持つことをお奨めします。
 

担当:茶山顧問